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出世・転職のカギ? 今からでも「月給4分の1貯金」

リクルートワークス研究所副所長 中尾隆一郎

ゆとりある資産がキャリアの選択肢を広げることも。写真はイメージ=PIXTA

もしあなたが20~30歳代で、本多静六の「私の財産告白」を読んだことがなければ、すぐ手に取ることをお勧めします。この本を読んで、書かれていることを実行すれば、転職をはじめ、40歳代以降のキャリアの選択肢が一気に広がるはずです。現在40歳代以降の方々も、「人生100年時代」になりました。今から実践しても決して遅くないでしょう。

本多静六はどんな人?

 「私の財産告白」は、多くの成功者が読んでいるといわれる本です。内容は、伝説の億万長者、本多静六のお金と人生の真実が書かれています。書籍の帯には、「誰もがわかっている、誰もが知っている ごく当たり前のことしか本多静六は語っていない。しかし、だからこそ、これが痛烈なパンチなのだ」とあります。

 ページを繰っていくと、まさにその通りの内容なのです。極めて簡単な当たり前のルールを定め、その当たり前のルールを、強い意志で実行し続けて億万長者になりました。つまり、「継続する意思があれば億万長者になれる方法」が書かれているのです。

 本多静六は幕末の1866年、現在の埼玉県久喜市に生まれました。苦学の末、農商務省所管の林学の高等教育機関、東京山林学校に入学。一度は落第するものの、猛勉強して首席で卒業します。その後、私費でドイツに留学し、ミュンヘン大学で博士号を取得しました。92年、東京農科大学(現在の東京大学農学部)の助教授になり、「月給4分の1天引き貯金」と「1日1ページの原稿執筆」を開始します。この「月給4分の1天引き貯金」が重要なルールです。

 研究の傍ら植林や造園、産業振興など多方面で活躍。東京の日比谷公園や明治神宮、福岡の大濠公園をはじめ、多数の公園の設計や改良に携わるだけでなく、独自の蓄財投資法と生活哲学によって巨万の富を築きました。1927年、定年退官を機に、全財産を匿名で寄付!(驚きですね)

 その後も「人生即努力、努力即幸福」をモットーに質素な生活を続け、370冊余りの著書を残しています。

お釈迦様がお経で説いた4分割法

 本多静六は、薄給のころから月給の4分の1を貯金し、ボーナスや臨時給も貯金します。その貯金したものを、株や不動産に投資し、資産を大きくしていったのです。1カ月58円の給料袋から4分の1の14円50銭を引き抜き、残りの43円50銭で一家9人(大学助教授になるとたくさんの親戚が居候してきた)の生活をするわけです。

 ご本人も書かれていますが、これは本多の発明ではありません。古くはお釈迦(しゃか)様がお経の中で説き、江戸時代には老中の松平楽翁や農民思想家の二宮尊徳らも奨励してきた貯金法です。「私の財産告白」には、「貯金の問題は、豊富の如何(いかん)ではなく、実行の如何なのです」とあります。実際、給料日前の数日は、子どもたち含め本当に辛かったようです。

 ドイツ時代の恩師から、「いかに学者でも優に独立生活ができるだけの財産をこしらえなければ駄目だ。そうしなければ常に金のために自由を制せられ、心にもない屈辱を強いられることになる。学者の権威もあったものではない」と言われたことがきっかけだったそうです。本多の場合は、専門が林業であったこともあり、秩父の山に投資して財産を築かれたようです。

 本多は25歳で実践し始め、15年後の40歳には給料よりも貯金の利子や株の配当の方がずっと多くなり、さらに20年たった60歳の頃には、多くの金融・不動産資産がある状態になっていたそうです。それを定年時には全額寄付するのです。すごすぎます。

年収300万円から20年続けると…

 あなたの現在の年収を仮に300万円だとします。投資原資は、年収の4分の1ですので、75万円になります。年収が毎年3%ずつアップすると20年後の年収は、300万円×1.03の19乗=526万円となります。年収のアップに合わせて投資原資も20年後には、526万円の4分の1の131.5万円となります。投資総額は20年間で約2000万円の計算になります。

 リターンが年平均5%、10%の2つのケースを計算すると、5%の場合は約3000万円。投資金額2000万円の約1.5倍で1000万円増えたことになります。一方の10%だと約4900万円で、2000万円の2.45倍。2900万円プラスの計算になります。20年間の年収総額が8000万円ですので、かなり大きなリターンになるのが分かります。

 20年でシミュレーションしましたが、この期間を25年、30年と長くすればするほど、リターンが大きくなるのは当然です。

固定額ではなく「比率」がポイント

 私自身はどうだったかというと、新入社員のときに会社の指示に従って、あまり深く考えずに3つの口座を作りました。当時は実家暮らしだったこともあり、給料があればあるだけ使ってしまうと考え、給料の一部の固定額を株に投資し、一部の固定額を2つの銀行に預け、そして残りを生活のための銀行に入れていました。偶然なのですが、本多静六の4分割法を実践していたのです。

 さらに、口座を複数持つと、意識も変わってきました。生活費部分も固定額を入れている2つの銀行を使う際には、やや罪悪感を持つようになりました。ただ、生活費が足りなくなると、固定額のうち1つを切りくずし、さらに足りなくなるともう1つを切り崩すという運用でしたので、実際に2つの銀行でお金がたまることはなく、私は億万長者になれませんでした……。

 大きな違いは、本多は固定「額」ではなく、「比率」でお金をためていたということです。つまり、給料が上がるに従い、投資額が増えていくわけです。一方の私は固定額。それも最初から4分割ではなく少額でした。しかも新人時代からその額を見直すことはありませんでした。とてもシンプルな話ですが、年月を経るとその差は歴然です。20代の若い頃にこの本を読んでおけばよかったと残念に思っています。

投機でなく投資 資産は分割して

昔も今も「分散投資」は基本。写真はイメージ=PIXTA

 日本では学校でお金について学ぶ機会が限られています。資産の大半を銀行に預けている方が多いようです。また、投機と投資も区別がつかないので、両方ともギャンブルだと考えている人も少なくありません。

 本多静六いわく、「財産を作る事の根幹は、やはり勤倹貯蓄で、これなしには、どんなに小さくとも財産と名のつくほどのものはこしらえられない。その貯金がある程度の額に達したら、他の有利な事業に投資するがよい。貯金を貯金のままにしておいてはしれたものである。その時に、投機をせずに投資にする。どのようになったら売るのか、損切りするのかルールを決めて、それに合わせて明確に運用する事が大事なのです」

 ずっと貯金していても、資産を増やすことはできない。投資が重要。ただし、投機ではなく、投資をすること。そして投資の売買は明確なルールを決めて、増えているときに欲をかかない、損をしているときに、損切りができるということが重要なのです。

 そして何よりも大事なのは、資産を分割して持っておくことです。よく言われることですが、卵を1つのバスケットに入れておくと、それが落ちた際に全部割れてしまいます。複数のバスケットに分割しておくことが重要なのです。これが長期に、かつ安定的に収益を上げ続ける秘訣です。仕事をしながら副業や兼業をするのも同じ考え方ですね。

 人生100年時代に備えて、自分の生き方・働き方の選択肢を増やすお金との付き合い方をぜひ考えてみてください。

中尾隆一郎

 リクルートワークス研究所副所長・主幹研究員。リクルートで営業部門、企画部門などの責任者を歴任、リクルートテクノロジーズ社長などを経て現職。著書に「転職できる営業マンには理由がある」(東洋経済新報社)、「リクルート流仕事ができる人の原理原則」(全日出版)など。

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