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転職の悲劇を生む 「人が辞める会社」8つの共通点

ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

転職した会社の理想と現実のギャップで辞めざるをえなくなる人も多い。写真はイメージ=PIXTA

 「次の転職を最後にしたい。一生働ける会社を見つけたい」。ミドル世代の転職相談で、特によく伺うことが多いリクエストです。労働政策研究・研修機構の「勤労生活に関する調査」(2016年)では、「1つの企業に長く勤め管理的な地位や専門家になるキャリアを望む者」の割合は50.9%と過半数に及んでいます。しかし実際には、入社した会社の理想と現実のギャップが大きすぎて辞めざるをえなくなり、気がつけばいたずらに転職回数が増えていたという方もたくさんいます。定着率と離職率が高い企業には、どんな違いがあるのでしょうか。

離職率が高い会社に8つの共通点

 転職支援の仕事は、裏返すと、採用支援業でもあります。企業の経営者や人事責任者からいただく相談内容は、「経営戦略を実現するために、必要な人材要件をどう定義すべきか」とか、「求める人材にどう自社の魅力を伝え、自社に興味を持ってもらえるか」というものが大半です。しかし、中には、

「離職者が止まらない。このままでは事業が回らないからなんとかしたい」

という、深刻な悩みを打ち明けられるケースもしばしばあります。離職問題で悩むすべての企業というわけではありませんが、いくつかの共通点があるのも事実です。以下に8つの観点でそれをまとめてみました。

(1)慢性的な労務課題

 長時間労働やサービス残業など、1人あたりの業務量が多く、労務問題が常態化している会社が典型例です。生活と仕事の境界を逸脱しすぎた会社は、ベンチャーであっても老舗企業であっても、やはり人材流出は止まりません。背景には、過度なノルマや目標管理など、従業員よりも短期利益を重視する考え方が横たわっていることが多いようです。

(2)ハラスメントの常態化

 これも問題外ではありますが、今も「パワハラ」「セクハラ」「モラハラ」などのハラスメントが横行している会社は存在します。古くから在籍する社員が多いと、集団的に「それが当たり前」の状態になっているため、中途入社で入った人が続かないという現象を繰り返すことになります。

(3)人材育成面での課題

 本質的に人材を重視していないために、自社の事業や職務でどういう道筋で人材を育成していくかの知見がたまらず、従業員に成長感を提供できません。人は「この会社でこれ以上働いても成長できない」と思い始めると、退職を検討する状態が継続化しやすく、いったん結婚・出産などのライフイベントが起こると、いとも簡単に会社を離れていきます。

(4)事業戦略が不明瞭

 事業戦略が不明確だったり、抽象的だったりする会社のケース。また、戦略そのものが共有されていないというようなケースです。基幹戦略そのものが存在せず、無数の戦術が部分最適で走っているだけという会社にありがちです。結果的に市場内での影響力が上がらず、「今後の勝ち筋が見えない→だから将来が不安」というネガティブ志向が加速します。

(5)コミュニケーション不全、相互不信

 組織秩序が機能せず、コミュニケーションがうまくとれない企業は離職が多くなります。部署間で利害が異なり対立するケースや、幹部層の権力闘争で派閥が形成されているケース、派閥どころか全員がバラバラに孤立し組織といえない状態など、社内の空気は冷え切ってしまい、風土にいたたまれなくなった人から離職していきます。

(6)給与・待遇の不整備

 同業他社と比較して給与が低すぎるというケースが典型例です。正当な労働対価としての報酬が支払われなければ、あっという間に人は離れてしまいます。その人の仕事に見合った報酬は、会社の存続と発展のための最も重要なエンジンです。

(7)人事評価システムの機能不全

 10年以上も人事制度の骨格が変化していない会社は、評価制度の機能不全に陥っている疑いがあります。経営目標の実現に向けて、人それぞれのミッションが明確に設定されていて、結果や成果が数値的に公正に評価される仕組みがあるかないかによって、当たり前ですが働きがいは大きく変化します。

(8)ミッションが不明確、または拡散している

 人事評価制度と表裏一体ですが、仕事内容や責任の範囲が不明瞭だったり、当初と話が違ったりすると、人はやる気を失ってしまいます。特に、中途採用などで「求人広告やエージェントから聞いていた仕事内容と違う。なぜ募集時の条件と違うのか」という違和感は、消えない不信感となり、退職意欲を誘発します。

人に期待し、尊重する会社は「定着率の質」が高い

 一方で、人材が長く定着し、かつ活躍を続けている企業もあります。ただ、人が辞めないだけではなく、生き生きと能力を発揮しているので「定着率の質」が高い会社と言ったほうがよいと思います。

 会社の風土やマネジメントポリシーで、昔からそうだったという企業もあれば、離職課題が明確になったのちに、課題を乗り越えるために努力をして風土を変えてきた企業もあります。そういう企業には、

  1. 従業員一人一人が尊重され、その人の強みに期待されている
  2. スキルアップや成長を実感できるシステムがある
  3. 入社前に想定していた魅力と現実のギャップが少ない
  4. 職場の人間関係が安定していてストレスが少ない
  5. 努力や結果がしっかり評価され、課題も率直に指摘される

といった傾向があります。

 定着率の質が高い企業は、人間がやりがいを感じるメカニズムに着目して、個々人の能力を生かせる体制の構築に成功しています。特に、上記のような傾向をもとに、多くの従業員が高い当事者意識を持っているとしたら、これほど強い組織はないでしょう。

企業との「価値観」の相性を調べ尽くす

 2年前に転職のお手伝いした30代後半の方は、長く広告代理店の営業として働いていましたが、少し異色の転職理由を持っていました。勤務先の会社は、半年前に入社したばかり。もともと前職時代から憧れていた会社だったということでした。初めての転職で望んでいた仕事に就くことができ、自分が希望していた以上の年収も得られたそうです。

 素晴らしく恵まれた環境にしか見えませんでしたが、その方は本当に落ち込んで憔悴(しょうすい)しきった状況で、「一刻も早く転職したい。転職先が決まらないまま先に退職することも考えている」ということでした。理由は、顧客対応についての考え方が、会社と自分とで180度異なり、まったくすり合わなかったこと。

 単に上司との相性ということではなく、顧客を回転させて生産性を高める全社的な方針と、1社1社の顧客と深く向き合い、結果的に取引額を高めていくというその方が信じているスタイルがかみ合わず、たった半年で精神的にも参ってしまうほどの重大な事態になってしまいました。

 「仕事の進め方にそこまでこだわるのか」と思われるかもしれませんが、この方は、自分が信じているポリシーを変えてまで会社に合わせることはできないタイプでした。能力も実績もお持ちだったので、無事、価値観の近い企業に転職されました。前職とは比べられないほど小さな会社でしたが、とても満足度が高く、現在もその企業で大活躍しておられます。

 仕事に対して自分自身が持っている価値観を意識しておらず、いざ転職してから違和感を覚える方はたくさんいます。キャリアの遠回りをしないように、転職活動を始める際には、仕事内容や年収などのハード情報だけではなく、まず自分が大切にしている価値観の有無を明確にしましょう。もし重視する価値観があるのであれば、「転職先の企業の考え方とマッチしそうか」ということや、自分自身の価値観が言語化できない場合でも、「その企業の理念、ビジョンに自分が腹の底から共感できるか」という点は、必ず押さえていただければと思います。

黒田真行

 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」(【関連情報】参照)など。
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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