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会社員の56%「転職に前向き」 過熱する市場のリスク

ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

人材の流動化が進む中で注意すべきことは? 写真はイメージ=PIXTA

 人材サービスのパーソルキャリアが9月に発表した「転職に対するイメージ」調査によると、転職をポジティブにとらえる会社員の割合は56.4%と半数を超え、すべての世代でポジティブがネガティブを上回る結果になったそうです。また、転職経験がない会社員の約3人に1人が「現在転職を考えている」と回答。働く側の流動志向は非常に高まっているといえます。しかしこの流れにリスクはないのでしょうか。今回は「大転職時代」に留意しておくべきポイントを見ていきます。

3人に1人が検討中の「大転職時代」

 パーソルキャリアの「転職に対するイメージ」「理想の働き方」についての調査は、20代から60代の会社員1200人を対象にしたものですが、その中で以下のようなトピックが判明しました。

  1. 全世代の会社員の56.4%が転職にポジティブと回答。40代、50代だけはネガティブ派と拮抗しているものの、20代、30代、60代は、ポジティブ派が圧倒的
  2. 約半数(49.9%)の会社員が「現在の会社では理想の働き方ができない」
  3. 転職経験がない会社員の約3人に1人が現在転職を考えている
  4. 理想の働き方を実現するために求めるものは、20代が「プライベート」重視、50代は「仕事へのやりがい」を重視

 まさに「大転職時代」を迎えていると感じます。自由回答の中には「自分の理想とする働き方を実現するためには転職が有効」という意見や「人生100年時代といわれる中、一つの仕事にこだわる必要がない」など、全世代においてポジティブな回答が見られたそうです。また、転職経験がない人の転職意向は、20代では約半数(49.5%)にも上りました。

 理想の働き方を実践するために重要なことを20代と50代に聞くと、1位は両世代とも「給料」。ミレニアル世代の20代は「プライベートの時間」(79.6%)を重視する一方、シニア世代の50代は「仕事のやりがい」(75.6%)を重視する傾向があり、世代間の価値観の違いも浮き彫りになっています。20代のミレニアル世代は、仕事とプライベートの両立を優先して仕事選びをするという実態も浮かび上がっています。

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採用企業が気にする3つのこと

 働く側が転職に肯定的で、転職活動の積極性が高まっている一方で、受け入れる側はどう考えているのでしょうか。採用する企業側では、自社が求める人材に出会える可能性が上がることは歓迎しても、個々の候補者を見る際の尺度は大きく変化していません。より具体的に言うと、候補者の選考・スクリーニングにおいて、

  • 転職回数
  • 在職期間
  • 退職理由(ホンネは他責的な理由ではないのか?)

という観点をとても重視する企業は、以前と変わらず多い状況です。

  • 転職回数2回、現在の就業先が3社目、というのが上限。それ以上転職している人は書類段階で不採用(情報通信機器メーカー)
  • 在職期間が2年以内で2社以上転職を繰り返している人はNG(建築資材商社)
  • あまり合理的な理由がない転職をしている人は信用できない。退職理由次第では見送り(クラウドサービス)

 いくら人手不足でも、長く活躍してもらえる人材を厳選して採用したいという企業側の意向は根強くあります。求職者側の転職に対する価値観がポジティブになり、転職活動者数が増加したとしても、受け入れ側の選考基準が変わらなければ、マッチング総数が増えないばかりか、理想の転職が実現できなくなる人が増えてしまう可能性もあります。

転職市場が過熱しても採用側の基準は大きく変わらない。写真はイメージ=PIXTA

 長引く人手不足の状況と働き方改革の推進で、特に20代や30代前半の若手層や有力ベンチャーなどで「給与水準が上昇した」企業、「働きやすさが改善した」企業の求人が増加しています。しかし、年収や勤務時間、オフィス環境など、外形的な条件に重きを置きすぎて転職を繰り返すと、30代後半以降になって採用の需要が減るのを目の当たりにしたときに、自分が思い描いたようなキャリアが構築できなくなるリスクも大きくなります。

 また、有効求人倍率は景気と密接に連動しているので、たとえ少子高齢化による中長期の人手不足のトレンドがあったとしても、ひとたび景気が落ち込むと、一斉に採用の門戸は閉じられてしまいます。ちなみに10年前のリーマン・ショックの後には、月次ベースの求人広告件数が前年比マイナス50%以上という落ち込みが長期にわたって続き、求人広告業界や転職エージェントは大打撃を受けました。

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 求人が減るだけではなく、固定費を下げるためのリストラが強化され、さらに求職者が増加する悪循環が発生するので、景気がマイナスに反転すると、好景気の人手不足時代には考えられなかったような苦境に陥る人が続出することになります。

 転職しやすい市場か、条件がいい求人が多いかといった外部環境は、キャリア構築にとってきわめて重要な要素です。就職氷河期時代の就活生のように、本人の責任ではなく、環境とタイミングだけの問題で、世代まるごとが働き方に苦労するケースもあります。しかし、「転職しやすい条件が整っている」という環境は、転職のトリガーにはなりえません。あくまでも「自分のモノサシでどうキャリアを構築していくか」という戦略ありきであるべきだと考えています。

転職は手段、充足感が持続する状態を

 キャリア形成で最も重要なことは「仕事人生で得られる充足感が持続できる状況」を作ることです。転職するか、今の会社で頑張り続けるか、場合によっては起業するか、などの選択肢は、どれも手段にすぎません。

仕事での充足感が持続できることが大切。写真はイメージ=PIXTA

 40歳や50歳という大きな節目ごとに、仕事人生のゴールをイメージして、そこまでの経路を構想することは重要です。構想はあくまで構想なので、予定外のことや、自分の価値観が変化すれば修正していくことを前提に、多少遊びを持った設計にしておくことをお勧めします。

 そして、仮置きで作ったゴ-ルイメージから逆算して残りの年数をどう過ごしていくのか、キャリアを通じて充足し続けられる環境を自ら作り出していければ理想的です。その際、自分自身の身体や心理、また、子育てや親の介護、加齢が自分自身にもたらす影響などをできる範囲で想像して、その先の時間軸の中で、自分の価値観がどのように変化するかを織り込んでおけると、ブレ幅は少なくなるはずです。

 さらに余裕があれば、「松(順調)」「竹(中庸)」「梅(逆境)」というように、楽観シナリオと悲観シナリオの幅を想定し、もし予定通りに進まなかった場合に、どんな条件になったらどんな手を打つかを決めておければ、不測の事態に備えているという安心感が高まるはずです。

 もしゴール設定がうまくできないとか、自分なりのキャリアがうまく描けないという場合は、自分自身をリセットする作業が必要かもしれません。経営コンサルタントの大前研一さんの有名な言葉にこんなものがあります。

人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目は付き合う人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

 自身のキャリアやゴールのイメージを自分なりに想像できない状況に陥っている方には、かなり効果を発揮する言葉ではないでしょうか。外部環境に揺さぶられず、ぜひ自分なりのモノサシで不透明な時代を生き抜く準備を進めていただければと思います。

黒田真行

 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」(【関連情報】参照)など。
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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