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出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

35歳からの「力試し転職活動」が命取りになる理由

ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

転職には今も「年齢の壁」が立ちふさがる。写真はイメージ=PIXTA

転職サイト「doda」がビジネスパーソンを対象に実施した「転職成功者の年齢調査」(2018年上半期)によると、「転職に年齢は問わない」と考える人が58.6%と過半数を占めているそうです。しかし、実際の転職活動の成否は、年齢によって大きく変化します。35歳から5歳区切りで求人が激減する年齢の壁は、人手不足の今も厳然と存在するのです。今回は、35歳以上の方々が転職する際に押さえておくべきポイント、具体的な戦略・戦術を確認していきます。

力試しの転職活動が招く不幸

転職には不安がつきものです。

私が転職相談で日々お会いする方々の中でも、初めて転職活動している方や、未経験の業界や職種に挑戦する方などは特に、転職後にうまくなじんでいけるかどうか、不安を感じているケースが目立ちます。逆に経験値が高く、年齢が高くなればなるほど「転職後が不安」派は減少し、「転職に自信あり」派が増えていきます。

仕事上での成功経験が増えスキルの習熟度が上がるほど、つまり年齢が高いほど、自分に自信がある人の割合が増加するのは当然のことかもしれません。しかし、この「自己信頼の高さ」は、転職活動にとっては功罪両方の影響を及ぼします。

プラス面での効果は、自信を持った言動がキャリアをプレゼンテーションする際に堂々とした強い印象を生み出すもとになり、結果的に面接官に対して自分自身を魅力的に見せるというもの。逆にマイナス面は、自信が強すぎた場合に、傲慢で偉ぶった印象になってしまう懸念があるということです。

また、面接のコミュニケーションでの印象だけでなく、転職活動そのものに対するスタンスをゆがめてしまうリスクもあります。その代表的な症状が「自分をいくらで買ってくれるのか。あなたが提示するポジションや条件次第で、私は貴社に転職するかどうかを検討します」という態度が、あからさまに出ることです。

転職活動において「自分をいくらで買ってくれるのか」というスタンスが成立するのは、転職支援サービスを使っていない人に対して企業側の代理人がさまざまな手法で口説きにいく、文字通りのヘッドハンティングの場合だけです。

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転職サービス登録直後のオファーメールには冷静に対処したい。写真はイメージ=PIXTA

転職サイトや転職エージェントに登録した後で届くスカウトメッセージは、本来のヘッドハンティングではなく、転職意思を持った人向けのダイレクトメールだと考えておいたほうがよいでしょう。多くの場合、同じ内容のものが数十人から数百人に送られています。かなり希少なキャリア、スキルを持っていなければ、1対1で送信されることはまれです。

さらに、そのメッセージを受け取って「自分にぴったりなオファーだ」と感じた人たちは、「ぜひすぐにでも自分にその仕事を任せてほしい。条件にはこだわらない」と積極的な回答をしている可能性があります。その中に「自分をいくらで買ってくれるのか。条件次第で検討します」という返信が混ざっていたとすれば、順調に選考が進む可能性はゼロに近づいてしまうでしょう。

たとえ形式的にはスカウトメールだったとしても、応募する段階では「なぜこの仕事に興味を持ったのか」とか「この会社にどんな貢献ができると考えているのか」といった志望動機くらいは、しっかり語れる状態にしておく必要があります。

35歳から激減する選択肢を焼き畑にしない

転職市場は、年齢によって歴然と需給バランスが変化します。35歳、40歳、45歳という5歳ごとの区切りで求人が激減していく年齢の壁は、人材不足が叫ばれている今も大きく変わっていません。

また、ウェブエンジニアやデータサイエンティスト、建築技術者、薬剤師など、需要が爆発的に増えている一部の職種を除くと、いわゆる営業系や企画系、事務系などは「需要=求人数」に対して「供給=転職希望者数」が大きく超過している買い手市場の構造になっています。

つまり、35歳を超えると、転職の対象となりうる求人企業やポジションのカードは激減し、きわめて限定されることになります。34歳と36歳、39歳と41歳では、転職市場としてはまったく異なる需給バランスになるのですが、年齢の壁や、職域による需給状況は目に見えるものではないために、落とし穴にはまってしまう人は後を絶ちません。

さらにいえば、同地域、同業種、同職種で転職活動する場合、募集企業の顔ぶれは想像以上に限られていて、一定の新陳代謝はあっても、1、2年のスパンではあまり大きな変化が感じられないのが現実です。一般的に、一度応募して不採用という結果になった場合、少なくとも1年、ほとんどの企業では数年間は、再度応募しても受け付けてもらえません。

「35歳も超えて、成果を出せる自信もついてきたので、自分の市場価値を試してみたい」と考えて転職活動を始める方は意外に多いもの。しかし、いざ転職市場に足を踏み入れてしまうと、あまり本気ではないスタンスで応募しても、本気度の高いライバルに負けてしまう可能性が高い上に、近い将来の自分の可能性すら自ら潰してしまうことになりかねません。可能性に満ちた畑を、わざわざ自らの手で焼きつくしてしまう恐れすらあるのです。

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在職中に、期限を決めた本気の転職活動を

転職活動の前に自分の能力、スキル、知識を書き出して、客観的に事実を把握することも大切。写真はイメージ=PIXTA

40歳を前に一定の経験を積み、自信がついてきたところで長期的なキャリア形成を見据えて転職を考える、あるいは市場価値を探ってみるというのは、多くのビジネスパーソンが通る道でしょう。それ自体は当然の考え方で何の問題もありません。しかし、その方法論を間違えてしまうと、大きなリスクが控えているということは頭の片隅にとどめておいてください。

では具体的に、どうすればよいのでしょうか。

結論からいうと、「自分の市場価値調査」と「キャリア構築の実施」を明確に切り分けることが重要です。「自分の市場価値がどんなものか」という興味本位の実験を、チャンスが限定された本番環境で使い切ってしまうと、取り返しがつかなくなってしまいます。

まずは自分の志向・価値観と保有する具体的な能力、スキル、知識を書き出して、できるだけ客観的に事実を把握することがスタートです。その上で自分が可能性を感じている業界や企業があれば、できる限りのネットワークを駆使して、外部から人材を採用する余地や求められている人材タイプ・能力を取材するというのが次の段階。こうした周辺調査がしっかりできれば、自分の市場価値がどのあたりの座標になるか、ある程度は感じ取れるはずです。

そして、しかるべきタイミングが来たら、いよいよキャリアづくりを実行するフェーズに入ります。実行段階で重要なのは、転職する覚悟が決まっていること。また、できるだけリスクを抑えるために勤務先企業に退職意思を伝えず、働きながら転職活動する時間を作ることも重要です。

応募先企業に対しては、

  • なぜ今回、転職しようと考えるようになったのか
  • 自分個人としてどんなキャリアを築いていきたいのか
  • 過去培ってきた経験やスキルで、どんな貢献ができると考えているのか

を、しっかりプレゼンテーションすることがベーシックな戦術となります。

自分の力を過信せず、かといって弱気になりすぎず、できるだけ正しいキャリアの現在地と明確な目的地を思い描いて、貴重な時間と機会を上手に作り出していただければと願っています。

黒田真行

 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」(【関連情報】参照)など。
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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