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逃げの転職は癖になる 「収入・肩書」動機に落とし穴

経営者JP社長 井上和幸

「不満だから」で転職を繰り返すと、キャリアの危機に。写真はイメージ=PIXTA

あなたの周りを見渡してみてください。会社の同僚、友人・知人、親類縁者、あるいは取引先の人たちや、趣味の仲間たち。その中で、離婚経験者はどれぐらいいますか? そして、転職経験者は?

同じ年の離婚件数を婚姻件数で割った割合は、日本では全国平均で約35%(厚生労働省の2017年人口動態統計による)。転職率については統計データの取り方が様々あり、明確な統一値はなかなか得にくいですが、日本経済新聞社が「gooリサーチ」と共同で、ビジネスパーソンを対象に実施した、2013年の転職意識調査によれば、転職経験がある人の割合は61.4%でした。大づかみに言えば、私たちのうち、3人に1人以上は離婚を経験し、半数以上が転職する。そんな時代に生きています。

そもそも国が成長し先進国から成熟国へと至る過程で、洋の東西を問わずその国の中で増える2つのことが、「離婚」と「転職」だそうです。欧米では転職は当たり前のことだというのは、皆さん、既知のことと思います。

先進国・成熟国になるということは、情報がよりオープンとなり、多様・大量の選択肢を国民が等しく手にすることができるようになることです。それが国民の「選択の自由度」を上げるため、こうしたことが当たり前となるのです。

日本においては結婚も就職も、一度縁を得たら、不平不満はあったとしてものみ込みつつ、波風乗り越え生涯添い遂げる。そんな姿がありましたが、もはやそれも昔のこととなり、伴侶も職場も、選び直しが可能というのが当たり前となりました。

選択の自由が上がり、「選び直す」際の心理的・物理的ハードルが下がる。より良い選択の機会が増えるのは基本的にとても良いことですが、そこには落とし穴もあります。

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「ハネムーン効果」と「ハングオーバー効果」にご注意を

21世紀の今、成熟国である日本に住む私たちは、自由に「離婚」「転職」ができる環境におり、何かあれば、この選択肢を実行することができます。

そもそも離婚も転職も、「別れたい理由」「辞めたい理由」があるからするわけですが、ではなぜ、いったい私たちは、わざわざ一度別れた後に「再婚」「再就職」をするのでしょう?

「そうは言っても、寂しいし」「もっと理想の人(職場)が見つかったから」「生活のためには、ひとりで(無職で)いるわけにもいかない」……。様々な事情があり得るでしょう。

心理学者ボスウェルらのこんな調査があります。2500人ほどの管理職を5年間に渡って追跡調査し仕事の満足度を測ったところ、前職で不満が高まり転職した調査対象者の管理職たちは、転職した直後、仕事の満足度が高まることが分かりました。ボスウェルら調査チームは、この現象を「ハネムーン効果」と名付けました。新婚生活の楽しさと一緒ということでしょうか。

ところが、事はこれで一件落着とは収まりませんでした。入社後、少し時間が経つと、この管理職たちの仕事の満足度は、みるみるうちに下がってしまったのです。そればかりか次の職場での不満も次々と起こり、ストレスも増大するようになりました。

これをボスウェルらは「ハングオーバー効果」と名付けています。ハングオーバーとは「二日酔い」。酔いが覚めれば頭痛と胸焼けが襲ってくると言う現象に見立てているようです。

前の状況が嫌だからこそする離婚や退職のはずですが、その環境を変えて新しい場を「再婚」「転職」で得ると、最初はその前後の差(マイナス→プラス)で満足度が高い状態を得ます。しかし、すぐにそんな初期の高揚感はさめてしまい、以前の状況が再発してしまうわけですね。

恋愛・結婚に関するこんな箴(しん)言があります。「人間は、判断力の欠如によって結婚し、忍耐力の欠如によって離婚し、記憶力の欠如によって再婚する」

これを就職・転職に置き換えてみれば、「人間は、判断力の欠如によって就職し、忍耐力の欠如によって退職し、記憶力の欠如によって再就職する」(井上による改作)となりますね。

離婚癖、転職癖というものは確かにあると思います。最初の離婚や転職は、いざ実行についてはかなり思い悩み、逡巡するものですが、一度経験すると、「こんなものか」と慣れができ、2度目以降の実行ハードルが下がります。

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繰り返す転職に、「キャリア劣化」のリスク

離婚も転職も、3回、4回と繰り返すようになっている人を見ると、後になればなるほど、どんどんその期間が短くなる傾向があるようです。行き着くところまでいってしまう人は、最後はどうにもならなくなってしまい、離職・離婚したままになったり、以前よりずっと不遇な状況に至っていたりします。

そもそも離婚も転職も、場を変えることは決して悪いことではないと思います。昭和の時代までのように、終生我慢してとか、横暴な環境に耐え忍んでなどしなくても、今の私たちは、大いなる選択の自由を得ており、常により良い場に移り、居続けることのできる権利を得ているのですから。

ただし、それには条件があります。「ただ、単に場を変える」ことは、結局、その後また同じことを繰り返すことになりかねません。「嫌だから」「不満だから」だけで安易に辞めて、次の場に行っても、それで状況が改善されるとは限らないのです。

「嫌」「不満」だけで転職すると、大抵、次の職場でも同じような「嫌」や「不満」が発生します。だったら転職などしなかったほうがいかほど良かったことか。

辞めるにあたっては、もちろん相手の理由もあるでしょうが、自分にも問題があることが大半です。それを解消せずして、新しい場に行っても、同じことの繰り返しです。そんな人たちを、私はこれまで何百人と見てきました。

きつい言い方をするならば、「逃げているだけ」なら、離婚も転職もやめておきなさいということです。それ以上に、転職も離婚も、年齢を経るにつれ、回数が増えるにつれ、その次の条件は難しくなりますよね。嫌で逃げて、逆に、次の行き先の状況や条件が、その前までよりも悪くなるなら、なぜ場を変えているのかということです。

話をまとめると、「転職(離婚)に慣れると、『嫌なら、また場を変える』という選択を安易にしがちになる」「仕事をきわめる前に場を変えてしまうことで職務レベルが上がらない(逆に落ちていく)」「転職回数が増えるたびに人材市場評価が下がり年収や役職ダウン」「『逃げの転職』の場合、大抵、転職先でまた、逃げた理由と全く同じ問題に直面する」ということになります。

もし、あなたが転職したい気持ちに至った際は、まず、「本当に、今このチームで頑張り切ったか? もうこれ以上、改善の余地は残されていないか?」をしっかりと自問自答してください。そのうえで、なお「今の職場ではどうしても満たされない○○があるから、それが手に入る新しい場で思い切り勝負したい」と思えるなら、ぜひその熱い想いを持って、新しい場へチャレンジしてください。私たちもそれを心から応援します。

念のため、上記の「○○」は、やってみたい仕事の中身や仕事のやり方についてであり、ここがもし、仕事の中身を置いて「お金」とか「肩書」であった場合は、「まず、しっかり今の仕事をやりましょう。そこで結果を出してからです」と、私は一蹴しています。

仕事の転機を迎えての「社外異動」としての転職は非常に良いことですが、「逃げの転職」「ジョブホップ」は悲惨です。しっかりステージクリアしたうえで転職しない限り、レベルアップがかなうことはありません。

レベルアップ転職を成功させるには、まず目の前の敵(=仕事上、マネジメント上での課題)をしっかり倒して(=克服して)からです。このことだけは、ぜひ、しっかり認識してもらって、「ハッピーウエディング」となる転職を実現してほしいと願っています。

井上和幸

 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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