1. NIKKEI
  2. 日経HR

EXECUTIVE エグゼクティブ転職

次世代リーダーのための
ヘッドハンティング転職サイト

出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

ミドル転職のワナ 社長の一存や特別待遇の即答はNG

経営者JP社長 井上和幸

採用面接では温厚だったのに、社内では「暴君」という経営者もいる。写真はイメージ=PIXTA

ミドル、シニアの場合、転職の成功と失敗は自分自身のみならず、家族にまで大きな影響を及ぼす。それだけに皆さん、真剣に活動し転職先企業を選び、意思決定しているはずです。一昔前よりも事例や情報も増えてきており、転職先情報の確認はしやすくなっています。ところが、一向に減らないどころか逆に増えているやに見えるのが、ミドル、シニアの「入社してみて、こんなはずではなかった」トラブル。その防止策を考えてみましょう。

「いいね、ぜひ我が社に来ていただきたい」。中堅メーカーで経理財務部長を務めているAさん(52歳)は、応募先企業の一次面接で、初回から社長が登場されたことにも少し驚きましたが、1時間半程に及んだ面接の最後に飛び出した社長の一言に(「え? もう内定? やった!」)とうれしい驚きを隠せず、その場で、「はい、よろしくお願いします!」と即答しました。

社長一発面接で即内定という、一見すると、ラッキーなスピード決定。もちろん喜んで良いケースは多いです。独立系オーナー企業、ベンチャー企業などでは初回から社長が面接に出てくるケースは珍しくありません。

いきなり社長面接、一発内定の落とし穴

社長が求める幹部人材像が明確であり、それに照らし合わせて候補者の方が適していると判断すれば、オーナーであるが故に自分が即決で最終決定する。勢いのある、成長力の高いオーナー系企業での望ましいスタイルです。

ところが、この良縁のはずの「社長の一存」採用が、入社後に禍根を残すケースも存在するのです。実際に入社してみると、幹部や部下たちからつまはじき状態。「何で入社してきたんですか」「我々は聞いていない」「あなたのポジションには、本来、プロパーの○○さんが就任するはずだった」――。オーナートップであるがゆえの悪いケースがこの「社長以外の幹部、社員たちが、あなたの採用を聞いていない。自分たちに知らされず、社長が勝手に連れてきた」という採用パターンです。

こうした事態に陥らないためには、社長一発内定といううれしい事象に遭遇したら、そこで焦らず、「ぜひ、一緒に働くことになる同僚幹部の方と1~2名でよいので、お会いできますか」とお願いしてみる。あるいは社長の話のなかから社長と社員たちの平素のコミュニケーション、カルチャーを推察する。エージェントから紹介を受けた案件であれば、担当エージェントにしっかり確認をする。これらのアクションを必ず挟みましょう。

もちろんこれらのことについて事前に把握できているケース、エージェントからきちんと説明されているケースは問題ありません。その場で快諾、固い握手を社長と交わしてください。

ちなみにこれと逆のケースも存在します。入社してみたら、社長のほうが「俺、聞いてない」という場合です。

大手企業であれば社長までが関与しないケースはミドル、シニア層採用でもありえますが、中堅中小・ベンチャーであれば、まずありえません。この規模・ステージの企業への転職で、役員や人事のみの面接で採用された際には、自分の採用についての社長への報告、共有のされ方などは面接者やエージェントにしつこいぐらい聞いておいたほうがベターです。できれば「短い時間で構いませんので、社長にお会いできませんでしょうか」と遠慮せずにお願いしてみることも大事です。

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

あなたを見込んだ特別待遇年収提示の落とし穴

「Bさんにはぜひご入社いただきたいので、今回、特別に●●万円の年収を提示させていただきます」。中堅中小やベンチャー企業への転職で、あなたの前職給与が高かったため、その条件に合わせるなどの努力を受け入れ先企業がしてくださるケースもままあります。その分、通常のその会社の給与テーブルや規定からは外れたオファーとなる場合も少なくありません。

特別待遇の年収提示。非常にありがたい話ではあるものの、こうしたオファーを受けて入社する際にも、気を付けたほうがよいことがあります。

不思議なもので、他の社員平均よりも高給で入社すればするほど、特に上記のような特別待遇を受けての入社であればあるほど、「あの人、年収▲▲万円らしいよ」の社内噂情報はなぜか出回るものです。

尾ひれもつきがちです。「前職ではパワハラ上司だったらしい」「かつて、どこどこで問題を起こしたことがあるって」など、あなたの経歴などにも無用な噂、あらぬ風評が立ったりします。

さすがにそこまでひどいことは少ないにしても、いずれにしても「それだけ高い給与で入社してきているのだから、お手並み拝見」モードに周囲がなっているところに飛び込んでいくことになる可能性は少なくありません。

厚遇そのものが悪いわけではありませんが、既存社員とあまりにかけ離れた提示を受けての入社は、お互いのためにはあまりならないケースが多いのも事実です。ここは冷静に入社前の最終判断をしたいところです。

その特別オファーを受けても、入社後、十分にそれ以上の成果貢献ができることが確認できている(入社先にない重要な機能やノウハウをあなたが持っており、それを持ち込むことで事業が大きく伸びることが明確であるようなケース)。あるいは、「お手並み拝見、望むところ」、入社後、そうした社員たちからの疑い半分の視線を、粘り強くひっくり返していく関係構築への情熱と自信がある。このどちらかがあるならば、会社からの特別待遇をしっかり受け止め、それに値する働きでぜひ、新天地での恩返しをしてください。

これらがなくて、ただ前職給与水準との見合いなどで特例待遇給与額で入社していくなら、入社後のタフな職場環境をしっかり覚悟することです(相当の腹のくくりが必要です)。そうでないのなら、悪いことは言いません、本件についてはお互いの相場が合わなかったと思って辞退しましょう。

実はもうひとつ、あなたが入社先企業の給与テーブルに給与額を合わせるという選択肢も、もちろんありますが(そしてこれが本来、あなたと会社にとっての中長期的観点で良好な関係性を築くには最も望ましい選択肢ですが)、さて、あなたはそれを受け入れられるでしょうか?

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

人柄にほれて入社のはずが、社長の裏人格の落とし穴

「面接時にはあんなにいい人だったのに、いや、参りました」。先日も、サービス系中堅会社の執行役員として転職したCさん(48歳)からこんなため息交じりの相談を受けました。

「面接ではパワーポイントを使っての経営戦略説明までしてくださり、ビジョンも明確。戦略的に事業を推進していくタイプのトップだと共鳴したので入社したのです。それが、いざ入社し業務が始まると、24時間365日、それこそ夜中や週末でもご自身のタイミングで電話がかかってきて、『あれはどうなっている?』『あの商談はまだ決まらないのか?』『今月、絶対にあと●●万円受注を上乗せしろ』など、細かい確認や無理な指示が思い付き的に出続けるんです。何とか1年付き合ってきましたが、さすがにこれ以上はメンタルが持ちません」

入社してみたらパワハラ社長、パワハラ担当役員だった。残念ながらオーナー系・ベンチャー系を中心に最も多く起きている、ミドル、シニアの「入社してみて、こんなはずではなかった」パターンがこれです。

多くの優秀な社長、特にオーナー系社長や創業社長というものは、表の姿と裏(会社内やプライベート)の姿が表裏一体でほとんど変わらないものです。しかし、Cさんが遭遇したケースのように、顧客やメディアといった外部関係者への態度と、社員への態度がまったく異なるという、外面(そとづら)はとてもよいのに、内部では暴君のような人も確かにいます(私もそうしたタイプの人を直接・間接に知っています)。

ミドル、シニア層の方々は社長や役員の直下もしくは非常に近い立場で働きますから、転職先の社長や役員のキャラクターは極めて重要です。転職活動時もこの点を重視して、話を聞いている人も多いでしょう。それでも時折、このような社長に当たってしまって、入社後に大変な思いをする例は少なくありません。

未然の防止策としては、直接の印象以外に社員からの情報を複数得ることです。前任者が退職していて、補充者を採用する際は、前任者の退職理由なども可能な限り入手し確かめてみることをおすすめします。

かなり確実性が高い確認の方法は、その社長、役員を知る外部の複数人に人物の印象を聞いてみることです。ネガティブな印象でなくても、あの人とこの人とで、その社長・役員に対する印象が異なっていることが多い場合、要注意です。裏表のない人は社内外の誰に印象を聞いても、基本的に同じなのですが、これが異なる人は、場によってキャラクターを意識・無意識に使い分けていることが多いようです。さて、応募先企業の社長のレビューはいかがでしょうか?

ミドルシニアの「入社してみて、こんなはずではなかった」は、職務内容そのものの食い違いよりも、トップとの相性、会社の意思決定スタイル、会社のカルチャーなどに起因するケースが大半です。日常を過ごす転職先。ハード条件面だけでなく、リポートラインや管轄する部署のメンバー、同僚幹部なども含めての、人としての相性チェックを欠かさないよう努めましょう。お互い気持ちよく働くためにも、ぜひ心がけてほしいチェックポイントです。

井上和幸

 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

「次世代リーダーの転職学」をもっと読む

※NIKKEI STYLEのウェブサイトに移動します

おすすめコンテンツ
  • 10万人以上が受験「年収査定」無料査定を試してみる
おすすめ情報
  • 日経ビジネススクール

PAGE TOP

わずか5分でわかる、あなたの「エグゼクティブ力」
エグゼクティブ力診断テスト