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転職の成功阻む心のバイアス 10の法則で自己点検

ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行

認知バイアスは日々の買い物のような行為にも忍び込んでいる。写真はイメージ=PIXTA

転職をはじめとするキャリア選択に多大な影響を及ぼすのが、社会心理学でいう「認知バイアス」です。これが働くと、時に効率的な半面、不合理な選択をしてしまうことが起こり得ます。自分を客観的に見ることによって、リスクを下げることができるので、転職を考えるにあたっては、ぜひ心にとめてほしいと思います。

1)最初に経験したものが基準になる「アンカリング効果」

最初に印象に残ったモノ・コトや数字が、その後の判断に影響を及ぼすアンカリング効果というバイアスです。バーゲンセールなどで、1万円の値札に赤線が引かれて5000円と書かれていると、お買い得に感じられるというのが代表的な現象です。

最初に入社した会社の環境や経験が基準になってしまい、それとは遠い環境に拒否反応が出るということもありえます。自分の判断基準がどのように作られているのかを知り、冷静に費用対効果を見つめて判断する必要があります。

2)象徴的事例が基準化してしまう「代表性バイアス」

「値段の高いほうがいいモノのはずだ」というように、代表的事例から直観的判断をすることで無意識のうちに脳の負担を減らす現象をさします。「ベンチャー企業だからハードワークなはずだ」「オーナー社長はワンマンだ」というように、少ないサンプルをもとに決めつけが発生すると、最初の段階で本来は価値のある候補を捨ててしまうことにもつながりかねません。

認知バイアスが有益な選択肢を摘み取ってしまう

3)ランキングや評判など、相対的基準に判断をゆだねすぎる

絶対的な基準で考えるより、相対判断のほうが負担が少ないために、人間は相対的基準に判断をゆだねる傾向があるそうです。これが行き過ぎると「価格比較サイトで調べてみないと、その価格が高いのか安いのか判断できない」ということになりかねません。「同じ量のものでも、大きな皿に入っているより、小さな皿に入っているほうがたくさんあるように見えてしまう」というケースもあります。

キャリアに関することでいうと、「自分が1万円昇給しても、同僚が3万円昇給していると、自分は評価されていないように感じる」というようなケースがそれに相当します。1万円増えているにもかかわらず、同僚より2万円低くなったことに強い不満を感じ、転職を考える理由になるというケースは多々あります。役職定年でこれまでの部下が上司になるといったケースや、雇用延長の際に給与が半減する場合など、それによる不満で自主退職など不合理な結論を選択してしまうこともありうるので要注意です。

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意思決定にマイナス影響を及ぼす心理メカニズム

4)自分が所属する集団を高く評価する「内集団バイアス」

人間には自分が所属する集団を他の集団よりも高く評価する傾向があり、これを「内集団バイアス」といいます。評価の高い集団に属する人を高く評価してしまうケースもこれに相当します。「内集団バイアス」は、自分と近しい集団の評価を高めることで、承認欲求を満足させようとする心理の働きによって引き起こされます。自分が所属する(または所属していた)集団に好意的なぶん、それ以外の集団に差別的な態度を生むこともあります。学歴や所属企業、業界、職種など、いたるところにこのバイアスの落とし穴は潜んでいます。

5)自分に都合のいい情報だけを集める「確証バイアス」

人間には、無意識のうちに「自分に都合のいい情報」や「先入観を裏付ける情報」を集め、逆にそれに反する情報をなかったことにする心理があり、それが確証バイアスと呼ばれています。「自分が欲しいと思っているものの情報は、不思議とやたらに目に入ってくる」というのもその一例です。論理的な判断ではなく、単なる好き嫌い、食わず嫌いが補強され、本当に自分に役立つ情報を見落とす危険をはらんでいます。

6)過去の投資が将来の投資判断を間違えさせる

人間は、過去の投資の大きさによって、将来どのような投資をすべきかの判断を間違えてしまう傾向があるようです。「100万円分買っても当たらなかったギャンブルに、あと10万円買えば当たるかもしれないと考えて続けてしまう」というのが典型的なケースです。既に支払ってしまって回収不能な費用のことをサンクコスト(埋没費用)と呼びます。事業を続けるか中止するかを判断するにあたっては、いくら巨額でもサンクコストを考慮に入れてはいけないというのが経済学の考え方です。「せっかくここまでやってきたのだから、途中でやめるのはもったいない」という考えが、例えば急激に斜陽化していく業界や、需要の落ち込みが予測される職域などに向けられてしまうと、キャリアの選択肢は時間の経過とともにさらに狭まってしまう、というようなリスクを生みます。

7)「未来」より「今」を優先する「現在志向バイアス」

時間が経過すると、多くの利益が得られるとわかっていることでも、つい目先の利益を選んでしまう習性のことを現在志向バイアスと言います。キャリア形成は、実績の積み重ねによる周囲の評価の高低が非常に大きな影響を与えます。そのために時間がかかることも多いからといって、目先の収入やポジションで重要な意思決定をしてしまうと、その会社の人材育成ポリシーや離職率などの指標を軽視してしまい、中長期的に損失を拡大させるリスクがあります。

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合理的な行動を阻害する、自己認識のゆがみ

8)利益は確実にしたいが、損失は回避したいという「プロスペクト理論」

「利益を得る場面では確実性を好み、損失が出そうな場面ではリスクを好む」という人間心理をプロスペクト理論と言います。たとえば、「10%の確率で10万円もらえることより、100%の確率で1万円もらえることを好む」という利益獲得の確率を求める心理と、「ギャンブルの負けを取り返したいと思って、大ばくちにでてしまう」という損失を出さない確率に賭けたくなる心理という矛盾した両面の心理があるということです。サンクコストと同様、自分のキャリアに関して正常な判断を失わせて、意思決定を乱す作用があります。

9)自分を正当化しようとする心理

人間には発生した事実と自分の考えにギャップがあることに不快感を抱く「認知的不協和」という心理メカニズムがあります。その不快感を回避するために、以下のような行動を選ぶ傾向があります。

  • 事実を変える(事実が自分の考えに近づくように努力する)
  • 考えを変える(事実を受け止めて自分の考えを修正する)
  • 事実を軽視する(事実がじつは重要でなかったものだと思うことで痛みを弱める)
  • 新しい考えを補強する(「タイミングが悪かった」「誰かのせいだ」という視界の追加)

新たな努力や考えを修正する負担は大きいので、事実軽視や他責的な考え方が採用されやすい傾向がありますが、本質的な解決からさらに遠ざかってしまいます。

10)コミットメントと一貫性が生む立場の頑固さ

人間はいったん自分の立場を明確にすると、その立場を強固に守り、一貫して行動しようとする傾向を持っています。「会議の場で議論していて、自分だけが別の意見になったときに、引くに引けず感情的になってしまう」というようなケースがあります。一貫性を持つことが自分の利益になるという体験を持っている人は、無意識的により強く一貫性を保とうとするそうです。

また、途中で立場を変えることで、他者からの期待を裏切り、自分の価値が低下することを避けたいという心理も働くようです。一度、立場を表明した後であっても、環境や手に入る情報が変わることは多々あります。その都度、冷静に合理的な判断をするよう、可能な限り柔軟な気持ちを保持することをお勧めします。

黒田真行

 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」など。
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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