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潮目変わった転職市場 「できること」重視で道を開く

経営者JP社長 井上和幸

バスケットボールのピボット動作のように、転職でも強みに軸足を置こう(写真はイメージ)=PIXTA

米中経済摩擦や新型コロナウイルスなどの影響で、転職市場の潮目が変わったことはおそらく間違いないでしょう。そのようなタイミングで転職をお考えのミドル・シニアには、これまで以上に本質的な思考・選択・行動が求められます。そこで今回は「キャリアピボット」という戦略を軸にした、転職に臨む考え方を取り上げます。

厚生労働省が2月28日に発表した2020年1月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.08ポイント下がり1.49倍となりました。企業の新規求人数が前年同月に比べ16%減ったかたちとなり、同省は新型コロナウイルスによる中国人の旅行者の減少などに関連して「ハローワークや労働局に観光業や製造業から相談が来ており、今後を注視する」(日本経済新聞2020/2/28 厚労省幹部コメント)。有効求人倍率の低下は2月以降も続く可能性があると見られます。

そもそも2019年後半来、米中経済摩擦などの影響もあり、製造業を中心として求人数はこれまでの大幅増加基調から一転、減少し始めるのではないかといわれていました。さらに新型コロナウイルスの影響が足元のインバウンド関連市場を襲い、証券市場を揺るがせ、これから経済への大きなダメージが懸念されます。

そもそも転職をするのは何のためでしょう。短期的な理由(現職企業のリストラや倒産、家族の看護や介護、その他経済的や地域的な事情、人間関係問題などのやむを得ない事情)から中長期的な理由まで、様々な考えや事情があり得ます。今回は中長期的な理由にスポットを当ててみます。

中期的な転職理由、それは突き詰めれば、自身のさらなる成長と仕事力のレベルアップ(これを「キャリアアップ」というのだと私はとらえています)のための機会サーチであり、よりやりがいのある、望ましい職務につくための選択行為でしょう。そこに結果としての肩書きや年収がついてくるのです。逆はありません。そこで取るべき戦略が「キャリアピボット」です。

「ピボット」とはバスケットボールの用語で、軸足を起点にして回転するアクションを指します。転職とはまさに、なにがしかの転換を行う行為ですが、どのようなパターンがあるでしょうか。

望ましいキャリアピボット転職のケース3例

ピボット例1 現職企業でのポストレスに対して、転職先での幹部職チャンスを獲得

中堅メーカーで経理財務部長を務めるAさん(48歳)は5年前に経理財務の課長職から部長に昇進し、数名の部下を率いて同社の経理財務チームを統括してきました。着任後に管理会計の導入や会計システムの刷新などを行い同社の経理財務業務の戦略性を高め、効率化も実現。活躍している状況ではありますが、上長の取締役管理本部長は現在50代前半。折り合いは悪くない分、Aさんに次のステージの役割が回ってくることを期待することは、世代も近しい事情もあって、かなり難しい。率直にそのあたりのことを、社長や上長と話し合い、外の場を求めることに決めました。転職活動の結果、現職同等の役割でスタートしたのち、空席の役員への就任期待もあるポジションでの縁を得ることとなり、新天地に転職しました。

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経験や実績に軸足を置いて、新分野にチャレンジ

ピボット例2 現職企業で新規事業を立ち上げ、それを軸に新天地へ移籍

SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ベンチャーで事業責任者を務めたBさん(39歳)は、同社にスタートアップのフェーズで参画。基幹事業となるBtoB型SaaS事業の立ち上げを牽引しました。初めての経験でもあり、事業自体も独自のモデルで他にラーニングできる先行事例もなかったため、当初数年は先の見えない試行錯誤が続きましたが、そこからさらに数年を経て見事、その事業モデルを確立させ、正式にサービスを提供開始。マネタイズにも成功し、準備を進めてきたIPOもいよいよ目前に迫りました。新規事業の立ち上げから事業化までの一通りを手掛けたことで、Bさんには自分の適性とやりがいがこの0→1過程にあることに気づき、今後この道で歩もうと決意。そのような折、ベンチャー経営陣でのつながりから、某ベンチャー社長から「今度、当社でこのようなクラウドサービスを立ち上げたいと考えているのです。ぜひやってもらえませんか」とスカウトを受け、次のチャレンジとして移籍を決意しました。

ピボット例3 職務専門性を生かしつつ、今後の産業動向をにらんで近傍分野に転職

製造業系部品メーカーで事業企画部長を務めてきたCさん(52歳)。成熟業界特有の構造的な自社業績の頭打ち状況に対して歯止めをかける役割を担い、海外販売の積み増しや国内外での業務提携・事業提携などを仕掛けることで、役割を果たしてきました。その対策自体は自社経営陣の期待も高く、実績について評価も感謝もされておりやりがいあるのですが、今後の残りの社会人人生で、成長市場で積極的な事業チャレンジをやりたいと希望して転職活動を開始。Cさんのタフな経験と実績は、関連する製造企業では非常に魅力のあるものであり、グローバル展開をして、業績を好調に伸ばしている某成長メーカーの事業企画室長として招かれるに至りました。

これらはいずれも、私が実際に関わった事例を元に脚色したものですが、まさに今回のテーマである、中長期的観点での「キャリアピボット」転職といえるでしょう。

キャリアにおいてのピボットは、自分の「できること」を軸足にして、より望ましい「やりたいこと」「求められること」の方へと回転するのが望ましいです。上記3つの事例では、

ピボット事例1 「経理財務部長としての経験、実績」を軸足にして、「より上位の職務(役員クラス)期待値のあるポスト」へと回転

ピボット事例2 「SaaS事業の新規事業立ち上げ経験、実績」を軸足にして、「新たなクラウド事業の立ち上げ責任者ポスト」へと回転

ピボット事例3 「製造メーカーでの事業企画、事業開発・提携等での経験、実績」を軸足にして、「成長領域にある製造メーカーでの事業企画責任者ポスト」へと回転

と、それぞれ「できること」を軸足にピボットしています。これ以外にもいろいろなケースがありますが(あり得ますが)、重要なことは「あなたができること」を軸足にして、「あなたがやりたいこと、企業から求められること」へと回転することです。

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ミドル・シニア層の「軸足なし」転職は無謀

例えば「やりたいこと」軸でピボットすると、それは必ずしも企業からみて「あなたに期待すべきことに思えない場所」に転回してしまう可能性があります。いくらあなたがやりたいと思っていても、企業側からはあなたが「できる」と感じられない、あなたに「求めたい」ことは別のことだとなってしまいますと、残念ながら転職での縁を得ることはかないません。

最も危険なのは、軸足なしに両足とも動かしてしまうことです。新卒や第二新卒世代ならよいですが、ミドル・シニア世代が「未経験・ポテンシャルゾーン」に飛ぶのは危険でしかありません。率直に言えば、企業側からしますと、そうした応募は迷惑でしかないのです。

中長期的観点での転職(自身のさらなる成長と仕事力のレベルアップを果たす、よりやりがいのある、望ましい職務を得るための転職)を考えているミドル・シニアにとって、軸足がはっきりしているか否かが非常に重要です。

「キャリアピボット」転職=「あなたができること」を軸足にして、「あなたがやりたいこと、企業から求められること」へと回転

上記の式のカッコ内に、あなたは自分の文章を書き込めますか。これは、あなたの「できること」は確立されていますか、明確化されていますか、自覚できていますかという問いに等しいのです。

サッと書き込めた人は、ぜひ信頼できる近しいどなたかにそれを見てもらってください。「確かに、その通りだね」と言ってもらえれば合格です。

もしこれを書き込めなかったという人は、転職活動において日々、様々な求人案件に応募していると思いますが、いったんストップし、その前にまず、この公式を自分が腑(ふ)に落ちるものとしてしっかり確立させてください。それができれば転職活動の8割は完成です、あとはそれに沿って具体的な求人話を、公式に当てはまるか否かフィルターにかけていけばよいのですから。

ピボットなどせずにひたすらまっすぐ進む(=同一の職務、同一の専門性を生涯、極め続ける)道も、もちろんあります。

ただ、時代は変わります。その激しさは21世紀に入り激しさを増すばかり。これまで以上に、今日存在している職務が5年後、10年後にそのまま存在しているということは全く約束されない世界に、私たちは生きています。

そうであれば、軸足をぶれさせないようにしつつ、もう片方の足は何かこれまでと違う場所に時折置き替えてみるのも悪くありません。キャリアピボットが新しい自分を発見させてくれることも、非常に多くあるのです。

井上和幸

 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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