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出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

転職の決定、直感型か分析型か 4タイプに分けて判断

経営者JP社長 井上和幸

決断する方法によって、転職時の評価も変わる(写真はイメージ) =PIXTA =PIXTA

ウィズコロナも2年目に突入し、ここからの感染拡大の行方も、それに伴っての社会や経済の動静も、まだまだ先行き不透明な状況です。それが理由で転職を決意する人もいれば、それが理由で転職すべきか否かで迷う人も少なくありません。そもそもミドルやシニアの皆さんにとって、転職時の意思決定のし方は、その後のキャリア展開の明暗を大きく分けます。しかもこのコロナ禍の中、その重みは尋常ならざるものとなっています。では、ミドルやシニアの皆さんは、どのように転職における意思決定をすればよいのでしょう。

これまで転職した経験を持つ人もこのコラムを読んでいると思います。そんな皆さんに、質問です。皆さんは、どのように意思決定をして次の転職先を選択したでしょうか?

行きたい企業に関する情報を徹底的に調べまくって。とにかく応募先求人を多く集めて。知人・友人に聞いて。何となく自分のフィーリングで。あるいは、登録した紹介会社やサイトからのおすすめで、特に悩むも考えるもなくなど、様々なケースがあるでしょう。転職時の意思決定パターンには、おのずとその人の仕事や生活における意思決定の癖がそのまま出るものです。

転職時の意思決定パターンは、「多くの情報を集めようとするか」「少ない情報で満足するか」の軸と、「論理的に決めようとするか」「感覚的に決めるか」の軸との4象限からなります。

「多くの情報」×「論理的に」は「慎重分析型」。徹底的に分析して、全て納得できないと気が済まないタイプです。情報が手に入らないとストレスになります。

「多くの情報」×「感覚的に」は「優柔不断型」。いろいろと情報を集めてみますが、何で決めればよいのか迷ってしまい、決められないまま時間がすぎていく。そのまま意思決定できないか、あるいは最後はエイヤッとなります。

「少ない情報」×「感覚的に」は「直感型」。感覚的に合うと思えば、理屈抜きに直感でパッと決めます。その理由を聞かれたり、考えたりするのは苦手です。

「少ない情報」×「論理的に」は「決断型」。自分なりに定めた筋(だけ)について合理的に情報収集・分析・判断し、決めます。本人として「この理由で決めた」ということがはっきりしています。

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「感覚的に」決める人の2タイプ

では実際に、転職の場面で、どのタイプがどのようなことになるかについて、見てみましょう。

先日も転職相談者との面談で、開口一番、このような話がありました。

「選考中はお会いした社長や役員の方々、皆さん、とてもよい人で、〇〇をお任せしたいという話だったんです。ところが入社してみたら、自分が思っていた職務内容とは異なることが多くて。これでは話が違うと思い、入社後間もないですが、転職活動を再開しました」

転職の失敗例としての最も多い「あるある」は、入社してみたら入社前に聞いていた・思っていたことと異なっていた、というものです。上記のケースでも、本人は「だまされた」と言っていました。しかし、本当にそうでしょうか。「選考中に、そのおっしゃっている職務内容などについては確認されたのですか?」と尋ねると、「いや、説明がなかったので」とのことでした。

入社して「聞いていない」「約束が違う」に陥る人は、「少ない情報」×「感覚的に」で決めているケースが大半です。確かにフィーリングとしてはよいものがあったのでしょう。また、自身の(言い方は悪いですが、勝手な)解釈としては職務なども期待通りと思えたのかもしれません。しかし、結局は、確認不足がもたらすミスマッチです。

このタイプの人は、面倒くさがらず、期待されている職務内容や、評価のされ方、年収の決まり方などについて、しっかり確認するようにしましょう。

一方で、「多くの情報」×「感覚的に」で決める人は、転職活動を長期漂流しがちです。あれやこれやと応募して、それぞれ見て、話が進んでも、「どうしよう。ここでいいのかな」と考えながら、また新しい求人に応募して。決め手に欠いたまま、応募先だけが増えていく。

スキルや専門性を重んじる企業からはオファーが出ますが、かたやマネジメントとしての価値観や志向の合致をしっかり見る企業では苦戦しがち。1次・2次面接には進んでも、最終面接では「本当に当社に入りたいのだろうか」「結局、何をしたい人なのかがよくわからない」というような企業側の判断でNGとなってしまいます。

このタイプの人には、感覚的でもよいので、「今回の転職は、このポイントで決める」というものを定めるようにしましょう。もう一つ、時間軸(意思決定の納期)を決めるという方法もありますが、こちらはタイムアップで意思決定したものの、ふたを開けてみたら(入社してみたら)自分の意に沿うものではなかったということが起きる可能性がありますから、あまりお勧めしません。

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「論理的に」決める人の2タイプ

では、「論理的に」決めるタイプの場合は、どうでしょう?

「御社の理念や事業戦略については非常によく理解できました。一方では市場環境が厳しく、成熟業界ですから、今後の成長可能性がどれほどなのかを知りたいです。その情報を頂けますでしょうか」「マネジメントの方々とはお会いできて、相性も悪くないと確認できました。部隊をお預かりした後、問題なのはどのような部下たちがいるのかです。彼らとお会いできますか」

「多くの情報」×「論理的に」決める人は、転職時における選択ミスのリスクを極限まで減らそう、なくそうとします。これは非常に正しいアプローチで、まさに「転職は慎重に」なのですが、そこに落とし穴もあります。

このタイプは、上位の職務になればなるほど、応募先企業の社長や経営陣から「大丈夫か」と思われがちなのです。おおむねの選考を終えて、企業側としてはぜひ来てほしいと思っている。採用内定を通知した。しかし、その後、次から次へと、「この情報が欲しい」「次回はこの人と会わせてほしい」と、際限なく追加情報の要望がある。こんな人が時折、います。

こうした人は、経営の意思決定ができない人と見られる可能性が大。経営とは「判断」ではなく「決断」です。判断とは収集した情報を整理して多数決的に選択することであり、決断とは一定の情報を基にしつつも、予見したうえでリスクを取って、ときには多数ではないほうを選択するような行為です。

日々の事業・業務執行や経営とは、限られた情報と時間の中で、決断を繰り返していくこと。いつまでも「十分な情報を求めてくる」人は、経営不適格者であると企業はとらえます。特に百戦錬磨のオーナー社長は、確実にそう見ます。

そういう意味では、ミドルシニア、組織を率いる層については、「少ない情報」×「論理的に」決める人におおむね軍配が上がります。

自分なりの判断軸を持ち、そのための情報はしっかりと確認する。それに基づき、重要な部分が分かれば、そこで明快に意思決定する。社長から見て、決め際のよさ、決断力の観点で高い好感を持たれるのがこのタイプです。

この「少ない情報」×「論理的に」決める人にあえて懸念を述べるとすれば、本人としては「この理由で決めた」ということがはっきりしていますが、その意思決定ポイントが自身にとって本当に妥当なものであったかどうかはまた別の問題です。

意思決定力があるだけに、自分の考えに固執するところもあり、それが選択ミスにつながることもありますので、念のため周囲の意見、転職候補先として考えている方面に明るい人の見解を聞いてみるなど、「視界を広く」して最終意思決定に臨むと万全でしょう。

「少ない(限られた)情報」でいかに「論理的に」意思決定できるか、そこに感情(情熱)も乗っていれば言うことなしです。

ミドルやシニアの皆さんに求められる「リーダーとしての意思決定」とは、限られた情報と時間の中で自分なりの判断軸を持ち、決断していけるかの繰り返しに尽きます。転職での意思決定の際に、この資質がおのずと問われていることを認識して選考に臨めば、活動そのものにも、意思決定後の新天地においても道がひらけることは間違いありません。

井上和幸

 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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