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出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

アフターコロナは「ピボット転職」 軸足は自身の経験

経営者JP社長 井上和幸

軸足を生かして、新たな方向を探るピボットは転職にも生かせる(写真はイメージ) =PIXTA

まだまだ予断を許さないものの、この1年、事態の推移・動静に神経をとがらせてきた新型コロナウイルス禍の中での皆さんの転職活動も、緊急事態モードから次のフェーズに入りつつあります。2021年の転職はアフターコロナに向けての「出口戦略」を意識すべきタイミングとなるでしょう。そこで今、転職を考え、活動中のミドル・シニアの皆さんにお勧めしたいのが「ピボット転職」。「ピボット」とはバスケットボールの用語で、軸足を起点にして回転するアクションを指します。この足さばきを転職に応用するわけです。軸足になるのは、これまでのキャリアです。

時代の変わり目は、自身が軌道修正する絶好のチャンス

「ピボット転職」についてはちょうど1年前の当連載でも紹介しました。当時は、これから非常時に入りつつあることを予見しつつ、望ましいキャリアピボット転職のケース3例を挙げました。

  • ピボット事例(1)
    「経理財務部長としての経験、実績」を軸足にして、「より上位の職務(役員クラス)期待値のあるポスト」へと回転=「現職企業でのポストレスに対して、転職先での幹部職チャンスを獲得」
  • ピボット事例(2)
    「SaaS事業の新規事業立ち上げ経験、実績」を軸足にして、「新たなクラウド事業の立ち上げ責任者ポスト」へと回転=「現職企業での実績を糧に、今後有望な新天地へ移籍」
  • ピボット事例(3)
    「メーカーでの事業企画、事業開発・提携等での経験、実績」を軸足にして、「成長領域にあるメーカーでの事業企画責任者ポスト」へと回転=「職務専門性を生かしつつ、今後の産業動向をにらんで近傍分野に転職」

このアプローチ自体は、これから先のアフターコロナへの出口戦略においても有効です。今回、次の時代への変わり目に向けての視点として、(1)産業をピボットする(2)職種をピボットする(3)企業風土をピボットする――という3つの切り口を皆さんに提案します。

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強みを活かし、成長分野に移籍する

まず「(1)産業をピボットする」転職戦略からです。

あなたがこれまで経験し身に付けてきた専門性・スキルを生かし、アフターコロナに成長可能性の高い業界・ビジネスへ移籍する転職戦略です。王道、正攻法といえるでしょう。応募先企業から見ても、あなたの転職希望理由について異論なく納得できます。

このパターンを狙う際、最大の論点となるのは、あなたのこれまで所属してきた会社の業界・業種です。次のような状況にある場合、採用側は判断をちゅうちょしがちです。

これまで所属してきた企業は成熟産業である。旧来型の(多くの場合、どちらかというと硬直化した)働き方や組織・風土の中で働いてきた。対して、移籍希望先は新しい産業である。最先端の技術や知識を積極的に活用している。若く、柔軟な組織や風土だ。

この両者の間にある橋を渡りたいというのは、転職希望者からすれば当然の思いです。しかし、受け入れ先となる企業や経営者からみると、「うーん、あの業界・カルチャーの会社から転職して、うちでなじめるかな。期待する動きができるかな」となりやすいのです。

ここで確認しクリアすべきポイントは2つあります。

まずは職務専門性・スキルの部分で、移籍希望先の求める職種に合致していることを明確化すること。経理財務や人事、法務などの管理部門系職種はこの点を比較的クリアしやすいですが、それでも現在の勤め先の仕事スタイルと、希望先の業務の進め方の類似性についてはしっかり確認し、重なりがあることを具体的な話として応募時、面接時に伝える努力をしましょう。

もう一つはカルチャー(企業風土)やケミストリー(組織文化)でのマッチングです。あなた自身が具体的にどのような動き方をしてきたのか、またどのようなタイプの人たちとフィーリングが合うのかを棚卸しして、素直に伝えましょう。

これから成長していく産業分野の企業は、成熟産業の企業に比べて、業務遂行における「時間感覚」に大きく差があります。今まで「所要1カ月」と考えていた業務は、転職希望先では「1週間」、もしかしたら「数日」が当たり前かもしれません。このあたりが自分の感覚と合うか、確認を要します。自分に適する価値観なのかどうかをチェックしてください。

現在、成熟・衰退業種で働いている、あるいはコロナ禍の直撃を受けて、厳しい業界にいて、そこからの離脱を希望する人は、今のうちに積極的にピボット転職されることをお勧めします。産業ピボットを狙う転職においては、アクションは早ければ早いほど良いというのが鉄則です。

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今、持っている強みに、今後有望な強みを掛け算

次に「(2)職種をピボットする」転職戦略です。

職務としてアフターコロナにニーズ・広がりのあると思われる職種への移籍を狙うケースです。この際、ミドル・シニアの皆さんには、現在お持ちの専門性や経験・スキルを完全に捨て去るようなピボットは危険であり、実際、転職することは難しいということを改めて認識してほしいと思います。必ず、職種の「掛け算」で、これまでと今後を接合させることが大事です。

最近、私たちが関わったケースが参考になります。

・IT部門のマネジメントとして活躍してきたAさんは、顧客データ活用の方面に自身のテーマを絞り、前職でその部分に絡むプロジェクトに手を挙げ、転職において顧客データ活用戦力の責任者ポジションにチャレンジ。希望通り、その役割に着任。

・消費財系メーカーのマーケティング部長として専門を深め実績を積んだBさんは、今後を考えて、デジタル領域でのカバレッジを究めたいと希望。リアル+デジタルでの期待値が高い企業への転職を実現。着任後はデジタルマーケティングから新規事業のD2C部門も管轄し、今やデジタルマーケティング畑でのオピニオンリーダーとなっている。

・B2Bビジネスの営業から営業企画、事業企画と歩んできたCさんは、事業統括の立場で組織活性化や部門の人材採用・育成に関わり、これが自身のテーマ・ミッションであると感じた。転職にあたっては人事マネジメント職への転身を希望。現場での組織・人材活用経験を買われ、希望通りに成長ベンチャーの最高人事責任者(CHRO)に就いて活躍している。

いずれも前職での経験を軸足としながら、さらに今後の自身の希望テーマに関与できる職務へと展開していることがわかると思います。

合わない風土・文化の会社から脱出するのは案外難しい

3つ目に「(3)企業風土をピボットする」転職戦略を挙げたいと思います。

現在、あなたがもし何か働く「場」の課題や問題を抱えているとすれば、それはアフターコロナまで先送りせずに、今のうちに解消しておきたい重要事項です。企業や経営者とのビジネスの考え方や価値観の相違、求められるワークスタイルのずれ、外資系のカルチャーと日系企業文化の違い、ベンチャーのカルチャーとレガシー大手の風土の相違などがあり得ます。

何が良い悪いではなく、あなた自身があなたらしく働ける場と、企業側が持つ風土や価値観とのすり合わせをこのタイミングでしっかり行っておくことも、アフターコロナに向けて非常に重要なセットアップです。

ここが合致していなければ、いくら専門性やスキルが合致していても十分なパフォーマンスは出せません。逆にここが合致していれば、どのような事業・サービスであってもそれがあなたのライフワークとなる可能性は高いのです。

不思議なのですが、この件については、なぜか転職をするたびに前職と同じカルチャーやケミストリーの企業を結局は選択し、同じアンマッチを繰り返す人が非常に多いのです。「在籍効果」といいますか、これまで長らく在籍してきたことで自分に合わない風土や文化の会社に体が慣れてしまっているのだと思います。

ここから脱出するには、先の「産業ピボット」のところで紹介した通り、なるべく具体的に自分らしい働き方、意思決定の方法、時間感覚、相性の良い人物タイプなどをしっかり棚卸しして、どんなに職務内容や給与条件がよかったとしても、ここがしっくりこない転職先は絶対に選ばないという強い意思が求められます。

先日、某ベンチャーキャピタルの人と話をしていて、面白いなと思ったことがあります。それは、「アーリーステージから投資をしているベンチャー企業で、成功した(事業が相応以上に立ち上がりマネタイズが見えてきた、もしくは新規株式公開(IPO)に至った)投資先は、8割以上が創業時の事業からピボットしている」という話です。

確かに私も、当社のクライアントや取材などで話を聞くベンチャー各社をみていて、創業時の事業構想、初期のサービスから2、3度のピボットを繰り返した末に、革新的かつ顧客から求められるサービス、ソリューションに行き着いているというケースが非常に多くありますね。

それほど、当初思ったようにいくものではないというのがベンチャービジネスであり、新規事業であると思うのですが、個人のキャリアについても同じことがいえると思います。自身が年齢と経験を積み重ねる中で、また今のように大きな時代の節目、潮目において、過去に学びつつ、機動的に歩む先を軌道修正していける行動力こそが、これからの10年、20年を勝ち抜くエンジンだといえるでしょう。

今、このタイミングで転職することが望ましい、したほうがよい人は、必ずピボット的な動きになると考えてよいでしょう。もし、何のピボットも含まない転職になりそうであれば、それは現職に残るべきだというシグナルかもしれません。

井上和幸

 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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