1. NIKKEI
  2. 日経HR

EXECUTIVE エグゼクティブ転職

次世代リーダーのための
ヘッドハンティング転職サイト

出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

DXで高まる理系人材ニーズ 「越境転職」も活発に

エグゼクティブ層中心の転職エージェント 森本千賀子

理系人材が期待される場面は一段と広がってきた(写真はイメージ) =PIXTA

「理系人材」といえば、これまでは研究室などにこもって専門の研究や要素技術開発・製品開発に黙々と取り組み、その分野を極めていくというイメージが持たれていました。しかし、昨今、理系人材のキャリアの方向性が多様化しつつあります。

技術者たちが「マーケティング」「経営」の知識習得へ動く

メーカーで研究開発などを経験してきた技術者がビジネスクールなどに通ってマーケティングや経営を学び、事業開発などビジネス寄りのポジションへ転職していくケースが増えているのです。研究開発職に限らず、理系学部を卒業してメーカーに就職し、セールスやフィールドサービスなどの部門で働いてきた人なども同様です。

その背景にあるのが、今、大きな波が来ているデジタルトランスフォーメーション(DX)です。今や、あらゆる業種の事業会社がDX推進に取り組んでおり、専門部署を立ち上げたり増強したりする動きが活発。また、事業会社の活動を支援するSIer(エスアイヤー=システムインテグレーター)やコンサルティングファーム、さらにはDXに関連するプロダクトやサービスを持つテックベンチャーなどが入り乱れ、理系人材の獲得に動いています。

DX人材と聞くと、データサイエンティストや人工知能(AI)エンジニアといったIT(情報技術)系スペシャリストをイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、実際には、IT以外の機械、電機、化学といった領域の人たちも「理系のバックグラウンド」に期待が寄せられ、採用に至っているのです。

そもそも、データの分析やAIの導入ができればDXが実現するわけではありません。自動車業界が「モノ作り」から「サービス産業」、すなわち次世代移動サービス「MaaS(マース=モビリティー・アズ・ア・サービス)」へのシフトを進めているように、今、産業構造そのものが大きな転換期を迎えています。

これまでコンサバティブ(保守的)だった業界すら、事業モデルの見直しに乗り出す中、データ分析以前に、事業のあり方を考え、戦略を練る必要があります。そして、事業やサービスのプランを「技術」と掛け合わせていくことになります。

そのフェーズにおいては、デジタルの専門知識は必ずしも必要ではなく、物事を構造的・多面的に捉える力、「数字」への強さ、課題の発見・分析力が求められます。それらを備えている人材として「理系人材」が求められているというわけです。

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

産業構造が変化する中、求められる力が変わってきた

一例を挙げてみましょう。「化粧品」といえば、従来は百貨店やドラッグストアにブースを設け、あるいはメーカーによっては自社店舗を構え、対面カウンセリングを行いながら販売するスタイルが一般的でした。

しかし、近年の新興化粧品メーカーは、店舗での販売を行わず、電子商取引(EC)サイトを中心にプロモーションから販売、顧客サポートまで完結させている企業が多数あります。オンライン上で顧客の声をリアルタイムで吸い上げ、スピーディーに商品をアップデートしていくことで成長を遂げています。

つまり、研究開発をじっくり行った上で自社こだわりの製品をマーケットに投入する「プロダクトアウト」型ではなく、顧客のニーズに対応して製品を変えていく「マーケットイン」型のビジネスが台頭していると言えます。こうした企業では研究開発特化型の人材より、マーケティングに強い人材が重宝されるのです。

化粧品業界を例に挙げましたが、こうした傾向はあらゆる業界に見られます。この変化を察知した理系出身者たちは、マーケティングや経営、場合によってはファイナンスなどのビジネス知識を身に付け、事業開発分野でのキャリアを築いていこうとしています。

このとき、これまでの専門分野とは異なる業界へ移るケースも多々あります。実際、家電→自動車、機械・電機→エネルギー、医薬品→食品など、異分野への「越境転職」の事例が増えてきています。一昔前まで、理系の人たちにとっては、同業界・同分野での転職が当たり前で、そもそも転職するという発想もなかったことを考えると、これは大きな変化と言えるでしょう。

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

コンサルティングファームを経て事業会社へ

ここまでは「メーカー→メーカー」についてお話ししてきましたが、キャリアの道筋は多方向へ広がっています。先ほどと同様、マーケティングを学んだり、経営学修士(MBA)を取得したりした理系人材がコンサルティングファームに迎えられる事例も多数あります。

コンサルタントとして様々な企業の案件を経験しながらフレームワークを身に付け、次はスタートアップやメガベンチャーなど、「旬」な企業の事業開発職に転職する――。そんなキャリアパスを歩む人も増えています。

なお、事業開発のキャリアを発展させようとするなら、「理系の素養」+「ビジネスの知見」だけでなく、コミュニケーション力も欠かせません。研究開発職は自分1人で担当業務に没頭する場面も多いかと思いますが、近年の事業開発は自社だけで完結することは少なく、外部企業・人材との「共創」によって進められます。

「コラボレーション」「コ・クリエーション」「オープンイノベーション」といったワードが広く使われるようになりましたが、こうした共創プロジェクトを円滑に進めるためにも、連携する力を養う必要があるといえるでしょう。

なお、こうした「越境転職」は、30代後半以降になるとハードルが上がります。今の仕事やポジションに違和感を覚えていたり、将来に不安を抱いていたりするのであれば、早めに選択肢を広げる行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

とはいえ、30代後半以降であっても、越境転職ができないわけではありません。いきなりまったく異なる分野に移るのではなく、経験が生かせる類似分野へ「染み出す」形であれば、可能性はあります。

例えば、最近では化粧品メーカーがサプリメント商品を出すなど、異業種への乗り入れの動きが活発です。「医薬品から化粧品・食品へ」など、経験が生かしやすい異分野に注目してみてはいかがでしょうか。

昨今の理系人材のキャリアは、「新卒時の就職」から大きく変化しているようです。一昔前は、所属する研究室の「教授推薦」や先輩OB・OGの紹介が理系学生の就職ルートの王道でした。ところが、最近は「推薦」での就職が減少しているそうです。

理系学生をスカウトできる新卒採用サービス「LabBase(ラボベース)」を手がけているスタートアップ、POL(ポル、東京・千代田)が、理系人材を採用している企業の人事・約100人を対象に調査を行ったところ、約6割が「推薦制度を利用していない」と回答したそうです。また、推薦制度を利用している企業においても、約4割が「推薦経由での応募が減少している」と回答したそうです。

これは、理系学生たちが「受け身」にならず、自分の意思を持って行動を起こしている実態の表れといえるでしょう。特定の研究分野にこだわって深掘りしていくのか、「理系の素養」を生かして「ビジネス」よりのキャリアを積むのか――。理系人材の選択肢はさらに広がっていきそうです。

森本千賀子

morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊『マンガでわかる 成功する転職』(池田書店)、『トップコンサルタントが教える 無敵の転職』(新星出版社)ほか、著書多数。

今、エグゼクティブとしての市場価値が知りたい。

わずか5分でわかる、あなたのエグゼクティブ力
エグゼクティブ力診断

「次世代リーダーの転職学」をもっと読む

※NIKKEI STYLEのウェブサイトに移動します

おすすめコンテンツ
  • 10万人以上が受験「年収査定」無料査定を試してみる
おすすめ情報
  • 日経ビジネススクール

PAGE TOP

わずか5分でわかる、あなたの「エグゼクティブ力」
エグゼクティブ力診断テスト