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出典:NIKKEI STYLE 出世ナビ 次世代リーダーの転職学

35歳からの異業種転職 本当に「無謀な挑戦」なのか

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

異業種転職では職場の風土や体質にも下調べが欠かせない(写真はイメージ) =PIXTA

人工知能(AI)をはじめとするテクノロジーの進化、既存業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)など、産業の構造や仕事の進め方を根本的に変えてしまう流れは加速する一方です。構造的な業績不振にあえぐ既存産業界は「人余り」によるリストラが進み、先端ビジネスでは「人不足」にあえぐミスマッチも激化しています。このうねりの中で業種を超えた未経験領域への転職が増加していますが、35歳以上の社会人ベテラン組にも可能な選択なのでしょうか。

異業種へのチャレンジは、変革期に生き残る有効な手段

過去1年間にキャリア相談でお会いした人の中にも、35歳以上で未知の業界や仕事に転職し活躍しているケースがいくつかあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 30代後半の新聞記者の女性が法人向けクラウドサービスベンチャーの広報に転職
  • 40代後半で建築土木系の技術者として国家公務員で長年活躍してきた人がドローンやロボットを活用して「社会的な不安」を解決するベンチャー企業に転職
  • 昭和から続く老舗の紡績メーカーで営業をしてきた50代前半の営業部長がインターネット広告代理店の営業部長としてバリバリ仕事をこなしている

徐々にではありますが、「異業種にチャレンジしよう」と考える人が増えてきました。産業構造が変化し、業界の栄枯盛衰が激しくうごめく中で、そこで働く人々が異業種や異職種にチャレンジし、結果として成功事例が増えているのは歓迎すべきことだと思います。

これらの皆さんが転職を決断した理由で共通するのは、「自分が在籍する企業や業界の将来が見えない。異業種への転職は不安で恐怖心を感じるのは事実だが、10年後を考えたら、今のうちに思い切ったキャリアチェンジをするほうが、いい未来があるかもしれない」と考えていたことです。そして「今ここで動かなければ、ゆでガエルのように業界や会社と共にいつの間にか自分も沈没してしまうかもしれない」という、もう一つの恐怖がこの人たちを行動につき動かした背景にありました。

この決断ができるかどうかが、行動できる人とできない人の最大の分岐点になっています。

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人事も驚いた異業種人材の活躍度とは?

では、業界経験や職種経験は、転職後に活躍できるかどうかにどれくらい影響があるのでしょうか。少し古いデータですが、まずこの表をご覧ください。

これは40歳から55歳のミドル世代のホワイトカラーを採用したことがある企業の人事責任者へのアンケート結果です(人材サービス産業協議会調べ)。企業が中途採用した人材の入社後の活躍状況と出身業種・職種を尋ねた結果、業界経験の有無や職種経験の有無は、入社後の活躍ぶりにほとんど関係がないことがわかったのです。

ちなみに、異業種・異職種出身のミドル世代人材を採用した会社は、今後採用をしていく際に重視したい項目として「専門性以外のベーシックな職務遂行能力」を挙げています。人材採用の際に、一度、専門知識やスキルなどへのこだわりを横に置いて、成功体験を味わうと、中高年世代の人材であっても、未経験者の中にあるポテンシャルを活用したいという考え方になるようです。

35歳を超えてから異業種に転職することは、受け入れ先さえ見つかれば、さほど無謀ではないという様子が浮かび上がってきました。

異業種転職に成功するために抑えておきたいポイント

異業種・異職種への転職は、たとえ35歳を過ぎていても遅すぎることはありません。しかし、それを実現するのが簡単だというわけではありません。

異業種への転職の難しさは、業界によって風土や価値観、仕事の常識がまったく異なるところにあります。専門用語も違えば、仕事の進め方やスピード感、コミュニケーションをとる方法などすべてが変わるため、適応していくためには、過去の成功経験をすべて捨てて、ゼロから学んでいく覚悟は絶対に必要です。逆に言えば、その緊張感さえ持っておけば、慣れたつもりで同業界に転職するよりは、入社後に成功する確率は上がるかもしれません。

第1関門は「面接にたどり着けるか」です。一般的には「同業界・同職種の人材のほうが即戦力になるはず」と考えている人事が圧倒的な多数派です。そう考えている相手の書類選考を突破するには、それ相応の志望動機と自己PRをする必要があります。

まったく違う畑出身の自分がなぜこの業界、この企業を選んだのか。そして、この職種でどんなことがやりたいのか。これらを論理的に明示する必要があります。

また、自分が積み上げてきた経験やスキルには、どういう汎用性や共通点があって、転職希望先の会社で生かせるのか。その結果、業績にどんな貢献ができるのか。こういった事柄を明確に説明できるように準備する必要があります。

実際に転職をした人の成功事例、そしてうまくいかなかった人の失敗事例を、いくつかご紹介したいと思います。

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成功・失敗事例の共通点

【成功事例(1)】

食品メーカーの人事総務 → ECサイト運営会社の人事総務(38歳・男性・Aさん)

AさんはM&A(合併・買収)の後の事業統合の経験があったことがポイントになり、同様にM&Aをいくつか経験した企業に採用されました。本人の重視したポイントは「現場の第一線で責任範囲が大きいかどうか」という点。Aさんにとっては、価値観の異なる企業統合の進め方についてこれまでの経験を生かしていける点、上司から大きな裁量を任され、自分が矢面に立って方向付けができる点が噛み合って、今も活躍しています。自分が大事にする働き方をしっかり事前に確認・約束できてていたことが成功のポイントになっています。

【成功事例(2)】

インターネット広告の新規開拓営業 → コンビニエンスストアFC店舗の開拓(42歳・男性・Bさん)

転職活動を開始したとき、転職するか、起業するかを悩んだほど、Bさんは独立志向が強い人でした。前職では「顧客の業績拡大にマーケティングで後方支援したい」と新規開拓で実績を残しマネジャーとして活躍してきましたが、より経営に近いビジネスでスキルを磨きたいと転職を決意。自身が経営に強い興味を持っているだけに、独学で学んだ経営戦略や管理会計の知識も生かして、フランチャイズの加盟店開拓の仕事で、オーナーからの信頼も厚く、好業績を生み続けています。自分の興味や志向に近い仕事を選んだことが最大の成功要因かもしれません。

【失敗事例(1)】

大手メーカーの人事 →アパレルEC(電子商取引)の人事へ(41歳・男性・Cさん)

大手メーカーで人事課長として活躍してきたKさん。40歳を迎え、成長業界で自分の経験を生かしたいと、アパレルECサイトを運営するベンチャー企業に転職しました。転職先は人材の層が薄い組織だったので、Cさんの経験・スキルは歓迎されました。しかし、入社してみると、組織体制や風土の違いから、会社の意思決定や仕事の進め方に戸惑うことばかりだったそうです。外部の専門家にアウトソーシングしたくても予算が確保できず、残業の連続に疲弊。若いメンバーの育成にも苦労し、結局、2年もたたずに再び転職を考えることになりました。「現場がどんな働き方をしているのか、入社前にもっとしっかり調べるべきだった」と後悔していました。

【失敗事例(2)】

アパレルの販売・接客→ 美容製品の専門商社の購買へ(37歳・女性・Dさん)

自分の趣味でもある美容機器などを扱う仕事がしたいと、美容系の専門商社に、未経験の購買の仕事で転職。しかし、入社後すぐに「職場の人間関係や風土が合わない」と実感。設立50年以上の古い会社で年功序列や男性優位のカルチャーが根強く、前職では当たり前であった「風通しのよさ」がまったくなかったそうです。前回は「給与」や「仕事内容」を重視して転職しましたが、失敗して初めて自分にとって働きやすい環境とは何かを考えるようになり、現在は「社風」と言う観点を重視しながら再び転職活動をしています。

いかに企業に受け入れられるか、その突破法は確かに大事なのですが、長く機嫌よく働き続けるためには、自分が大切にしたい価値観や風土との相性もしっかり見極める必要があります。ぜひ、これらの観点を参考に、満足度の高いキャリア選択をしていただければと思います。

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/
「Can Will」https://canwill.jp/

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